精刊唐宋千家聯珠詩格 6 : 于済徳夫, 蔡正孫粹然 編[他] (和泉屋金右衛門等, 1900)
6・今昨字。又字。又字又。無端字。又字又。明日字。何人字。
聯珠詩格 6
用今昨字格(今昨の字を用いる格)
竹窓 朱文公
昨 日 土 墻 当 面 立 昨日は土墻 面に当て立つ
今 朝 竹 窓 向 陽 開 今朝は竹窓 陽に向て開く
人 心 若 道 無 通 塞 人心 若し 通塞無しと道わば
明 闇 何 縁 有 去 來 明闇 何に縁てか 去來有らん
「増注」性理群書に詠開窓に作る注に此の篇は塞者既に去明なる者自ら來ことを詠ず。
答施榮甫 趙章泉
昨 韻 村 中 好 客 稀 昨の韻は 村中 好客稀なり
今 吟 臨 水 送 将 帰 今の吟は 水に臨んで将に帰ことを送るべし
笑 談 未 了 風 吹 断 笑談 未だ了らざるに 風吹断
何 日 重 能 款 竹 扉 何の日か 重ねて能く 竹扉を款かん
「増注」款苦管切叩也。
過鑑湖 翁施龍
昨 年 曽 過 賀 家 湖 昨年 曽って賀家湖を過ぐ
今 日 煙 波 太 半 無 今日 煙波 太半無
惟 有 一 天 秋 夜 月 惟だ一天 秋夜月あり
不 随 田 畝 入 官 租 田畝に随はず 官租に入る
「増注」鑑湖は揚州山陰県に在り一名、鏡湖、古には南湖と称す。
用又字格(又の字を用いる格)
題鶴林寺 李渉
終 日 昏 昏 酔 夢 間 終日 昏昏たり酔夢の間
忽 聞 春 尽 強 登 山 忽ち春尽きると聞いて強いて山に登る
因 過 竹 院 逢 僧 話 竹院を過て 僧に逢うて話するに因て
又 得 浮 生 半 日 閑 又 浮生 半日の閑を得たり
「増注」鶴林寺は鎮江府黄鶴山に在り、旧名を竹林寺。宋の高祖嘗て此の寺に遊ぶ。
黄鶴あり、飛來因って以名。
雪霽 戎昱
風 捲 黄 雲 暮 雪 晴 風 黄雲を捲いて 暮雪晴れる
江 煙 洗 尽 柳 條 軽 江煙 洗い尽して 柳條軽し
廉 前 数 片 無 人 掃 廉前の数片 人の掃う無く
又 得 書 窓 一 夜 明 又得たり 書窓 一夜の明を
「増注」詩は須べからく有餘意を尽きざるを用い方に好し此の詩妙。
梁の孫康雪に映じ書を読む。
歎老 沈存中
唯 覓 少 年 心 不 得 唯だ 少年を覓るも 心に得ず
当 時 感 旧 已 潸 然 当時 旧を感じ 已に潸然
情 懐 此 日 君 休 問 情懐 此の日 君 問を休よ
又 老 当 時 二 十 年 又 当時より老いたり 二十年
「増注」年愈愈高く而思い愈深し言外限り無く意有り。
無題 僧凌原
忙 裏 偸 閑 未 得 閑 忙裏 閑を偸むも 未だ閑を得ず
買 書 幾 帙 不 曽 看 書を買うも 幾帙 曽つて看ず
旋 鋤 月 地 移 蘭 種 旋て月地を鋤て 蘭種を移し
又 費 工 夫 縛 矮 闌 又 工夫を費して 矮闌を縛す
「増注」旋去声鋤は穢を去す也。牛僧襦が詩に月地雲階洞仙を拝す矮倚蟹切短い貌。
用又字又格(又字を用いる又格)
江南逢李亀年 杜工部
岐 王 宅 裏 尋 常 見 岐王 宅裏 尋常に見る
崔 九 堂 前 幾 度 開 崔九 堂前 幾度か開く
正 是 江 南 好 風 景 正に是れ 江南の好風景
落 花 時 節 又 逢 君 落花の時節 又君に逢う
「増注」此の詩、前日相知之熟を述べ而して今日会逢之幸を言う、旧を感じ、
今を傷む意、言外に在り。
呉越 唐人
国 家 興 亡 自 有 時 国家の興亡 自から時あり
呉 人 枉 了 怨 西 施 呉人 枉了して 西施を怨む
西 施 若 解 亡 呉 国 西施 若し解り 呉国を亡ばさば
越 国 亡 時 又 是 誰 越国 亡ぶ時 又是れ誰ぞ
江亭 鄒花嵒
白 雲 深 處 僧 炊 飯 白雲 深き處 僧 飯を炊く
緑 樹 陰 中 人 喚 船 緑樹 陰中 人船を喚ぶ
一 片 夕 陽 吟 不 尽 一片の夕陽 吟じ尽くさず
鶉 鴣 啼 了 又 疎 蝉 鶉鴣 啼了して又疎蝉
「増注」鶉鴣は即ち鳴鳩也、爾雅の注に鳴鳩は今之布穀江東呼んで撥穀と為す。
晩歩 蕭雲麓
過 尽 江 南 二 月 天 過き尽す 江南 二月天
斬 新 緑 樹 暗 生 煙 斬新の緑樹 暗に煙を生ず
渓 山 不 老 詩 人 在 渓山 老いず 詩人在り
落 花 花 開 又 一 年 落花 花開いて又一年
「増注」時を撫し物を観て感概あり。鄭谷が詩に花開花落春悲涼。
用無端字格(無端の字を用いる格)
首夏 王荊公
荷 葉 初 開 笋 漸 抽 荷葉 初めて開き 笋漸抽つ
東 陵 西 蕩 正 堪 遊 東陵西蕩 正に遊に堪えたり
無 端 隴 上 脩 脩 麦 端無く 隴上 脩脩たる麦
横 起 風 寒 占 作 秋 横に風寒を起こして 作秋を占める
「増注」本集東坡二首作る此其の一也。
夜雨 王節卿
簾 幕 蕭 蕭 竹 院 深 簾幕 蕭蕭として 竹院深し
客 懐 孤 寂 伴 燈 吟 客懐 孤寂 燈に伴うて吟す
無 端 一 夜 空 揩 雨 端無く 一夜 空揩の雨
滴 砕 思 郷 萬 里 心 滴砕す郷を思う 萬里の心
「増注」客中雨を聞いて況や味、此如し。李遠が詩に一片閑雲萬里心。
用又字又格(又字を用いる又格)
江南逢李亀年 杜工部
岐 王 宅 裏 尋 常 見 岐王 宅裏 尋常に見る
崔 九 堂 前 幾 度 開 崔九 堂前 幾度か開く
正 是 江 南 好 風 景 正に是れ 江南の好風景
落 花 時 節 又 逢 君 落花の時節 又君に逢う
「増注」此の詩、前日相知之熟を述べ而して今日会逢之幸を言う、旧を感じ、
今を傷む意、言外に在り。
呉越 唐人
国 家 興 亡 自 有 時 国家の興亡 自から時あり
呉 人 枉 了 怨 西 施 呉人 枉了して 西施を怨む
西 施 若 解 亡 呉 国 西施 若し解り 呉国を亡ばさば
越 国 亡 時 又 是 誰 越国 亡ぶ時 又是れ誰ぞ
江亭 鄒花嵒
白 雲 深 處 僧 炊 飯 白雲 深き處 僧 飯を炊く
緑 樹 陰 中 人 喚 船 緑樹 陰中 人船を喚ぶ
一 片 夕 陽 吟 不 尽 一片の夕陽 吟じ尽くさず
鶉 鴣 啼 了 又 疎 蝉 鶉鴣 啼了して又疎蝉
「増注」鶉鴣は即ち鳴鳩也、爾雅の注に鳴鳩は今之布穀江東呼んで撥穀と為す。
晩歩 蕭雲麓
過 尽 江 南 二 月 天 過き尽す 江南 二月天
斬 新 緑 樹 暗 生 煙 斬新の緑樹 暗に煙を生ず
渓 山 不 老 詩 人 在 渓山 老いず 詩人在り
落 花 花 開 又 一 年 落花 花開いて又一年
「増注」時を撫し物を観て感概あり。鄭谷が詩に花開花落春悲涼。
用無端字格(無端の字を用いる格)
首夏 王荊公
荷 葉 初 開 笋 漸 抽 荷葉 初めて開き 笋漸抽つ
東 陵 西 蕩 正 堪 遊 東陵西蕩 正に遊に堪えたり
無 端 隴 上 脩 脩 麦 端無く 隴上 脩脩たる麦
横 起 風 寒 占 作 秋 横に風寒を起こして 作秋を占める
「増注」本集東坡二首作る此其の一也。
夜雨 王節卿
簾 幕 蕭 蕭 竹 院 深 簾幕 蕭蕭として 竹院深し
客 懐 孤 寂 伴 燈 吟 客懐 孤寂 燈に伴うて吟す
無 端 一 夜 空 揩 雨 端無く 一夜 空揩の雨
滴 砕 思 郷 萬 里 心 滴砕す郷を思う 萬里の心
「増注」客中雨を聞いて況や味、此如し。李遠が詩に一片閑雲萬里心。
用明日字格
題館壁 劉貢父
壁 門 金 闕 倚 天 開 壁門 金闕 天に倚て開く
五 見 宮 花 落 古 槐 五たび見る宮花の 古槐より落つるを
明 日 扁 舟 滄 海 去 明日 扁舟 滄海に去らば
却 従 雲 気 望 蓬 莱 却って雲気に従て蓬莱を望まん
「増注」此の詩劉貢父館中より出曹州に知らしむ。時に作言うは館閣近密の地に在り。
送李秋堂 朱静佳
相 逢 已 恨 十 年 遅 相逢て已に恨む十年遅きを
買 酒 呉 山 一 夜 詩 酒を買う 呉山 一夜の詩
明 日 送 春 仍 送 客 明日 春を送り 仍に客を送る
柳 花 風 飃 鬢 絲 絲 柳花 風に飃て 鬢絲絲たり
「増注」句老いて而して新呉山杭都に在り。
遇友復別 張国香
梅 花 江 上 訴 心 期 梅花 江上 心期を訴える
千 里 相 逢 酒 一 巵 千里 相逢て 酒一巵
明 日 馬 蹄 風 雪 裏 明日 馬蹄 風雪の裏
知 誰 先 有 寄 來 詩 知ぬ誰か先ず 寄せ來る詩あらん
「増注」韓退之が送別の詩に勤て新詩章を為に月に三四幅を寄せる。
餞別 趙小山
官 途 如 海 偶 同 遊 官途 海の如く 偶々同遊
杯 酒 陽 関 段 段 愁 杯酒 陽関 段段の愁
明 日 青 山 身 別 国 明日 青山 身 国を別れば
有 山 高 處 可 面 頭 山高き處有らば 頭を面す可し
「増注」別を惜しむこと丁寧語意悠長。
用何人字格(何人字を用いる格)
即日 韋応物
小 鼎 煎 茶 面 曲 池 小鼎 茶を煎じて 曲池に面う
白 鬚 道 士 竹 間 棋 白鬚の道士 竹間に棋す
何 人 書 破 蒲 葵 扇 何人か 蒲葵扇に書破し
記 得 南 塘 移 樹 時 記得す南塘 樹を移す時
「増注」謝安が卿人五万の蒲葵扇有り安んぞ取之を執士庶競と慕う・・・。
處士亭 杜牧
水 接 西 江 天 外 声 水は接す西江天外の声
小 齋 松 影 払 雲 清 小齋の松影 雲を払うて清し
何 人 教 我 吹 長 笛 何人か我に長笛を吹か教しめ
共 倚 春 風 弄 月 明 共に春風に倚て月明を弄さん
「増注」本集元處士が高亭に題を作る亭は宣州に在り。
硯屏 林子来
露 葦 霜 荷 落 晩 風 露葦 霜荷 晩風に落つ
数 行 帰 鴈 下 秋 空 数行の帰鴈 秋空に下る
何 人 収 拾 江 湖 景 何人か江湖の景を収拾して
都 在 明 窓 浄 几 中 都て明窓浄几の中に在り
「増注」此れ葦也荷也鴈也皆江湖の景而して画いて硯屏の間に移し言う也。
精刊唐宋千家聯珠詩格. 自1至4 : 于済徳夫, 蔡正孫粹然 編[他] (和泉屋金右衛門等, 1900)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1089434
精選唐宋千家聯珠詩格20卷のイメージ
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2579701?tocOpened=1
精選唐宋千家聯珠詩格20卷. [1]
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2562860
精選唐宋千家聯珠詩格20卷 【全号まとめ】
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2562860?tocOpened=1
石九鼎の漢詩館
http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/
石九鼎の漢詩館
http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/r_1.htm
中山逍雀漢詩詞填詞詩余楹聯創作講座 :漢詩 詞 填詞 楹聯 創作講座
http://www.741.jp/index.html
漢詩詞創作の基本要件
http://www.741.jp/kouza00/Kou-C01.htm#%E5%8F%99%E4%BA%8B%E6%B3%95%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7
漢詩作法入門講座
http://kansi.info/kansyou/rensyu01001.html
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聯珠詩格. 巻之1-20 / 于済,蔡正孫 編集 ; 大窪天民 校訂
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/i13/i13_01079/index.html
KR4h0148 御選唐宋詩醇-清-高宗弘曆
KR4h0157 宋詩鈔-清-吳之振
KR4i0062 宋詩紀事-清-厲鶚
KR4h0025 西崑詶唱集
https://www.kanripo.org/text/KR4h0025/
西崑酬唱集 (四庫全書本)
https://zh.wikisource.org/zh-hant/%E8%A5%BF%E5%B4%91%E9%85%AC%E5%94%B1%E9%9B%86_(%E5%9B%9B%E5%BA%AB%E5%85%A8%E6%9B%B8%E6%9C%AC)
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