唐宋千家聯珠詩格 4: 于済徳夫, 蔡正孫粹然 編[他] (和泉屋金右衛門等, 1900)
乱鴉啼散玉屏空, 一枕新凉一扇風.
睡起秋声無覓処, 満階梧葉月明中.
4・中二句畳字相貫。後三句畳字相貫。第一句畳字。第二句畳字。第三句。第四句。起聯平頭畳字。
聯珠詩格 4
中二句畳字相貫格
聞亀児詠詩 楽天
怜 渠 已 解 弄 詩 章 怜渠が已に詩章を弄することを解して
揺 膝 支 頤 学 二 郎 膝を揺し頤を支えて 二郎を学ぶを
莫 学 二 郎 吟 太 苦 二郎が吟 太だ苦むを学ぶこと莫れ
年 纔 四 十 鬢 如 霜 年纔か四十 鬢 霜の如し
「増注」此前輩詩意の妙処
浪山梅 荊公
聞 有 名 花 即 漫 栽 聞く名花有りて 即漫に栽と
慇 懃 準 擬 故 人 來 慇懃に故人の來るに準擬す
故 人 歳 歳 相 逢 晩 故人 歳歳 相い逢こと晩し
此 後 同 看 更 幾 回 此後 同じく看んこと 更に幾回ぞ
「増注」浪山は梅花の別種故に名花と言う。漫は本集に謾に作る。
遇翁霊舒 石屏
天 台 山 與 鳫 山 鄰 天台山 鳫山と鄰る
只 隔 中 間 一 片 雲 只だ隔つ 中間 一片の雲
一 片 雲 間 不 相 識 一片の雲間 相識らず
三 千 里 外 却 逢 君 三千里外 却って君に逢う
「増注」天台山は台州、鳫蕩山は温州、石屏は台州の人霊舒は温州の人、居する所郡を隔つ。
秋雲 何玉渓
掻 首 西 風 幾 片 愁 首を西風に掻て 幾片の愁なり
中 秋 定 自 不 登 楼 中秋 定て自ら 楼に登らず
登 楼 不 得 渾 閑 事 楼に登ること得ずんば 渾て閑事
且 放 前 山 出 一 頭 且つ前山に一頭を出さ放しめよ
「増注」月を愛し山を愛し雲の好く蔽することを怨む、意は必ず指す所に有り言を託す。掻首は躊躇。
後三句畳字相貫格
乱後曲江 王駕
憶 昔 争 遊 曲 水 濱 憶う昔 曲水の濱に争遊することを
未 春 長 有 探 春 人 未だ春ならず 長えに春を探る人有り
游 春 人 尽 池 空 在 春に游す人尽きて 池空しく在り
直 到 春 深 不 似 春 直に春深に到るも 春に似ず
「増注」西京雑記に朱雀街東に第五街皇城の東第二街昇道坊龍華寺の南、流水屈曲有り。曲江
と言う。王駕は唐昭宗の時の人。杜甫禄山の乱を経て曲江の蕭條たるを見て詩を作る。
招楊徳逢 荊公
山 林 投 老 倦 紛 紛 山林 老を投じて 紛紛に倦む
独 臥 看 雲 却 憶 君 独臥 雲を看て 却って君を憶う
雲 尚 無 心 能 出 岫 雲尚ほ無心 能く岫を出で
不 将 君 更 懶 於 雲 将に君更に雲よりも懶ならざるべし
「増注」陶淵明が辞に雲無心・本集の注に世故の紛と雖も尚ほ親朋に見るを思うのみと言う。
山中僧 天随子
手 開 一 室 翆 微 裏 手から一室を開く 翆微の裏
日 暮 白 雲 棲 半 閒 日暮 白雲 半閒に棲む
白 雲 朝 出 天 際 去 白雲 朝に出て 天際に去る
若 比 老 僧 雲 未 閑 若し老僧に比せば 雲未だ閑ならず
「増注」言う雲其の半に居し、則ち人は其の半を得る。
絶句 僧顕萬
萬 松 嶺 上 一 閒 屋 萬松 嶺上 一閒の屋
老 僧 半 間 雲 半 間 老僧 半間 雲半間
五 更 雲 去 逐 行 雲 五更 雲去て行雲を逐う
回 頭 却 羨 老 僧 閑 頭を回して 却って老僧の閑を羨む
「増注」萬松嶺は長寧県治の西に在り。
後二句畳字相貫格
君不來 方干
遠 路 東 西 欲 問 誰 遠路 東西 誰にか問んと欲す
寒 來 無 処 寄 寒 衣 寒來 寒衣を寄せる処無く
去 時 初 種 庭 前 樹 去る時初めて種し 庭前の樹
樹 已 勝 巣 人 未 帰 樹已に巣に勝りて 人未だ帰らず
「増注」物を観て人を憶う語切近にして意深遠。
客亭対月 李洞
游 子 離 魂 隴 上 花 游子 離魂 隴上の花
風 飄 浪 泊 遶 天 涯 風飄 浪泊 天涯を遶る
一 年 十 二 度 圓 月 一年十二度の圓月
十 一 回 圓 不 在 家 十一回の圓は 家に在らず
「増注」此の言は游子の漂蕩隴上の花の如く天涯に漂泊す故に一年十二月の内客と作り
今已に十一月矣。
閨怨聞鵑 舒孫野奎
杜 鵑 勧 妾 不 如 帰 杜鵑 妾に勧む 帰るに如かずと
何 似 啼 教 蕩 子 知 何ぞ啼て 蕩子をして知を教むるに似たる
郎 若 帰 時 還 有 妾 郎が若し 帰る時 還た妾有らん
妾 如 帰 去 更 依 誰 妾如し帰去らば 更に誰にか依ん
「増注」語婉意深く烈女不二の志有り。
第一句畳字格
対酌 李太白
一 盃 一 盃 復 一 盃 一盃 一盃 復た一盃
両 人 対 酌 山 花 開 両人 対し酌めば 山花開く
我 酔 欲 眠 君 且 去 我酔て眠らんと欲す 君且つ去れ
明 朝 有 意 抱 琴 來 明朝 意有らば琴を抱いて來れ
「増注」琴長三尺六寸六分廣六寸前後。大弦を君と為し小弦を臣と為す文王武王二弦を加えて君臣
の恩に合わす。此の詩宋伯貞言う二人対飲酔に到り我眠る君帰明朝琴を抱いて相就き対酌妨げず。
寄張書記 杜荀鶴
一 更 更 尽 到 三 更 一更 更に尽て 三更に到る
吟 破 離 心 句 不 成 離心を吟破して 句成ならず
幾 樹 秋 風 満 庭 月 幾樹の秋風 満庭の月
憶 君 時 復 下 階 行 君を憶て時に復た 階を下て行く
「増注」畳字艶更音庚。
夏雲 僧奉忠
如 峰 如 火 復 如 綿 峰の如く火の如く 復た綿の如く
飛 過 微 雲 落 檻 前 飛 微雲を過して 檻前に落ちる
大 地 生 霊 乾 欲 死 大地の生霊 乾いて死せんと欲す
不 成 霖 雨 謾 遮 天 霖雨を成さず 謾に天を遮ぎる
「増注」佛書に汝地性を観よ鹿は天地と為す細は微塵と為す乾居寒切燥也。
第二句畳字格
山中 盧玉川
飢 拾 松 花 渇 飲 泉 飢て松花を拾い 渇して泉を飲み
偶 従 山 後 到 山 前 偶々山後従り 山前に到る
陽 坡 草 軟 厚 如 織 陽坡 草軟にして 厚きこと織の如く
因 與 鹿 麝 相 対 眠 因て鹿麝と 相い対して眠る
「増注」此の聯王介甫が眠り黄犢草の句に如かず。
別野寄兄 竇鞏
懶 性 如 今 是 野 人 懶性 如今 是れ野人
行 蔵 由 興 不 由 身 行蔵は興に由て 身に由らず
莫 驚 此 度 帰 来 晩 驚くこと莫れ 此度 帰来の晩きことを
買 得 西 山 正 値 春 西山を買い得て 正に春に値う
夜直 王荊公
金 炉 香 尽 漏 声 残 金炉 香尽きて 漏声残す
剪 剪 軽 風 陣 陣 寒 剪剪たる軽風 陣陣寒し
春 色 悩 人 眠 不 得 春色 人を悩して 眠り得ず
月 移 花 影 上 欄 干 月 花影を移して 欄干に上る
「増注」形容の妙真に凡俗の風致に非有り
秋暁 陳月窓
乱 鴉 啼 散 玉 屏 空 乱鴉 啼散じて 玉屏空し
一 枕 新 凉 一 扇 風 一枕の新凉 一扇の風
睡 起 秋 声 無 覓 処 睡起 秋声 覓むる処無く
満 階 梧 葉 月 明 中 満階の梧葉 月明の中
「増注」欧陽公が秋声の賦に星月皎潔河は天に在り四もに人声無く声樹間に在り。
第三句畳字格
游水月台 李渉
平 流 白 日 無 人 愛 白日を平流して 人の愛する無し
橋 上 閑 行 只 自 知 橋上 閑に行て 只だ自から知る
水 似 晴 天 天 似 水 水は晴天に似て 天は水に似たり
両 重 星 点 碧 瑠 璃 両重の星は点す 碧瑠璃
「増注」杜甫が詩に波涛満頃瑠璃堆し。
華清宮 崔魯
草 遮 回 磴 絶 鳴 鑾 草 回磴を遮り 鳴鑾を絶す
雲 樹 深 深 碧 殿 寒 雲樹 深深として 碧殿寒し
明 月 自 来 還 自 去 明月 自から来り 還た自ら去る
更 無 人 倚 玉 闌 干 更に人の玉闌干に倚る無し
「増注」天宝14年禄山反し栄陽を陥し遂に潼関に克つ明王蜀に幸す故に
此詩鳴鑾を絶すと言う
閑歩 康節
因 随 芳 草 行 来 遠 芳草に随うに因て 行て来ること遠く
為 愛 清 波 帰 去 遅 清波を愛すが為に 帰り去ること遅し
独 歩 独 行 仍 独 坐 独歩 独行 仍に独坐
初 凉 天 気 未 寒 時 初凉の天気 未だ寒かららず時
「増注」康節大寒に出ず大暑に出ずの意
松声 誠齋
松 本 無 声 風 亦 無 松 本と声え無く 風も亦た無く
適 然 相 値 両 相 呼 適然として 相値うて両ながら相呼ぶ
非 金 非 石 非 糸 竹 金に非ず石に非ず 糸竹に非ず
万 頃 銀 涛 殷 五 湖 万頃の銀涛 五湖に殷たり
「増注」上の二句即ち韓愈が謂う所草木声無くも風之を撓せば鳴くの意
下の二句言は其鳴すること是れ金石糸竹の声に非ずと。
第四句畳字格
元渓道中 韓渥
水 自 潺 湲 日 自 斜 水は自ら潺湲 日は自ら斜なり
尽 無 鶏 犬 有 啼 鴉 尽く 鶏犬無くして 啼鴉有り
千 村 萬 落 如 寒 食 千村 萬落 寒食の如し
不 見 人 煙 空 見 花 人煙を見ず 空く花を見る
「増注」此の聯皆な両截句。潺湲は流る貌。
宮怨 劉媛
雨 滴 梧 桐 秋 夜 長 雨 梧桐に滴て 秋夜長し
愁 心 和 雨 到 昭 陽 愁心 雨に和して昭陽に到る
涙 痕 不 学 君 恩 断 涙痕は学ばず 君恩の断するを
拭 却 千 行 更 萬 行 千行を拭却すれば 更に萬行
「増注」白楽天が詩に秋雨梧桐葉落る時。
浮山洞 東坡
人 言 洞 府 是 龍 宮 人は言う洞府 是れ龍宮と
升 降 随 波 與 海 通 升降 波に随い海と通ずる
共 坐 船 中 那 得 見 共に船中に坐して 那ぞ見ることを得ん
乾 坤 浮 水 水 浮 空 乾坤は水に浮き 水は空に浮く
「増注」此の句妙水は天を浮く地を載する之語に本ずく。
武威山 秋厓
家 在 清 渓 第 幾 峰 家は清渓 第幾峰に在り
誰 牽 薜 茘 采 芙 蓉 誰 牽 薜 茘 采 芙 蓉
漁 歌 未 断 忽 帰 去 漁歌 未だ断ず 忽ち帰り去る
翆 壁 一 重 雲 一 重 翆壁 一重 雲一重
「増注」山は建州崇安県に在り九曲有り世に伝う武威君の理る所山高三百仭。
起聯平頭畳字格
履道居 楽天
莫 嫌 地 窄 池 亭 小 嫌うこと莫れ 地窄くして池亭の小なるを
莫 厭 家 貧 活 計 微 厭うこと莫れ 家貧にして 活計の微なることを
多 少 朱 門 鎖 空 宅 多少の朱門 空宅を鎖す
主 人 到 了 不 曽 帰 主人 到了して 曽て帰らず
「増注」楽天東都履道里に居し沼を疏し樹を種え石楼を構える。
示姪 山谷
莫 去 渓 辺 学 釣 魚 渓辺に去り 釣魚を学ぶこと莫れ
莫 将 百 丈 作 轆 轤 百丈を将て 轆轤と作すこと莫れ
清 江 濯 足 坐 窓 下 清江に足を濯で 窓下に坐す
燕 子 日 長 宜 読 書 燕子 日長くして書を読むに宜し
「増注」此の詩痛快警作策真に子を得て之体を訓誨する末句勉励尤も深し。
贐別 鄭谷
揚 子 江 頭 楊 柳 春 揚子江頭 楊柳の春
楊 花 愁 殺 渡 江 人 楊花 愁殺す 渡江の人
一 声 羌 笛 離 亭 晩 一声の羌笛 離亭の晩
君 向 瀟 湘 我 向 秦 君は瀟湘に向かい 我は秦に向かう
「増注」羌笛は七孔胡人吹く所の笛也馬融が長笛賦に近世双笛羌より起る、注に言う
羌人竹を伐し未だ畢らざるに龍有り水中に鳴く羌人旋即竹を截り之を吹く
金縷衣曲 杜氏
勧 君 莫 惜 金 縷 衣 君に勧む 金縷の衣を惜しむこと莫れ
勧 君 須 惜 少 年 時 君に勧む 須らく少年の時を惜しむべし
花 開 堪 折 直 須 折 花開て折るに堪えば 直に須べからく折るべし
莫 待 花 残 空 折 枝 花残するを待ち 空く枝えお折ること莫れ
「増注」杜秋娘は金陵の女也年十五李錡が妾と為る嘗て錡が為に此詞を唱う
起聯四平頭畳字格
梅辺 秋崖
一 枝 密 密 一 枝 疎 一枝は 密密 一枝は疎なり
一 樹 亭 亭 一 樹 枯 一樹は 亭亭 一樹は枯
月 是 毛 錐 煙 是 帋 月は是れ 毛錐 煙は是れ帋
為 予 写 作 百 梅 図 予が為に 写し作す百梅の図
「増注」此詩言は梅樹の密疎栄枯各自態あり煙月の下に暎し画を作す
神仙 邵清甫
一 炬 清 香 一 巻 経 一炬の清香 一巻の経
一 輪 明 月 一 張 琴 一輪の明月 一張の琴
回 頭 萬 象 皆 賓 客 頭を回せば 萬象 皆な賓客
細 嚼 南 山 北 斗 斟 細に南山を嚼て 北斗に斟む
「増注」神霊、仙は遷る也、山に遷入也、釋名に老いて死せず仙と曰く。
野梅 謝春卿
不 傍 疎 籬 不 近 墻 疎籬に傍はず 墻に近ずかず
不 臨 官 路 不 横 塘 官路に臨まず 塘に横らず
前 村 開 遍 人 知 少 前村 開て遍し 人知ること少し
馬 上 唯 聞 有 暗 香 馬上 唯だ聞く 暗香有ることを
「増注」王荊公が詩に暗香有るが為に来る
盧山歩月 周登
不 入 山 中 不 識 閑 山中に入らずんば 閑を識らず
不 因 月 上 不 知 還 月の上るに因ずれば 還ることを知らず
老 僧 長 揖 帰 方 丈 老僧 長揖して 方丈に帰る
只 有 鐘 声 送 出 山 只だ鐘声 送りて山を出る有り
「増注」此四不字下し得て又活是四字と雖も只是二意前詩と又別
精刊唐宋千家聯珠詩格. 自1至4 : 于済徳夫, 蔡正孫粹然 編[他] (和泉屋金右衛門等, 1900)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1089434
精選唐宋千家聯珠詩格20卷のイメージ
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2579701?tocOpened=1
精選唐宋千家聯珠詩格20卷. [1]
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2562860
精選唐宋千家聯珠詩格20卷 【全号まとめ】
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2562860?tocOpened=1
石九鼎の漢詩館
http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/
石九鼎の漢詩館
http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/r_1.htm
中山逍雀漢詩詞填詞詩余楹聯創作講座 :漢詩 詞 填詞 楹聯 創作講座
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漢詩詞創作の基本要件
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漢詩作法入門講座
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聯珠詩格. 巻之1-20 / 于済,蔡正孫 編集 ; 大窪天民 校訂
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/i13/i13_01079/index.html
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